●申告分離課税
株式等を譲渡したときの譲渡損益(事業・雑・譲渡の所得)は、他の所得と区分して課税されます。
ただし、株式等の譲渡による各種所得(事業・雑・譲渡の所得)の間では、先物取引を除き損益の通算は可能で、一定の場合には損失の繰越もできます。
税率には、原則税率と優遇税率があり、所得計算にもいくつもの特例があります。
上場株式等は「特定口座年間取引報告書」をもって申告書添付書類の計算明細書等の代用とすることがでいます。
なお、申告分離課税を選択した上場株式等に係わる譲渡所得と配当所得との間では、損益通算や譲渡損失の繰越控除が可能で
●例外的な課税方式
・株式譲渡損益の申告不用制度
一定の要件を満たす特定口座内での上場株式等の譲渡による所得金額については、特定口座外の上場株式等とは区分して計算します。
・非課税
株式等以外の有価証券を売ったときの所得で、総合課税や分離短期譲渡所得課税の対象とならない公社債や投資信託などは非課税。
・総合課税
下記のものは総合課税となり、取引の態様により事業・雑・譲渡のいづれかの所得になります。
・株式形態によるゴルフ会員権の譲渡による所得。
・国外で発行される割引債の国内取引による所得。
・割引の方法により発行される公社債に類する利付公社債の譲渡による所得。
・住宅金融支援機構などの発行する国内発行割引公社債の譲渡による所得。
・特定短期国債等の譲渡による所得。
・分離短期譲渡所得課税
資産の70%以上が土地等である法人の株式および出資を所有期間5年以下で譲渡等したときには分離短期譲渡所得として課税されます。
●損益通算の計算
・株式等に係わる譲渡所得等の金額は下記の計算です。
総収入金額ー譲渡原価ー必要経費=株式等に係る譲渡所得等の金額
・譲渡収入には判断が難しいケース
交換など契約額が不明のときは時価で譲渡とみなされる。
法人への贈与や低額譲渡は時価譲渡とみなされる(自己株取得の場合は除く)
合併・分割・減資・清算などのケースでは、株式売買がないのに株式譲渡があったとみなされることがある。
・譲渡原価(取得費)の計算
譲渡原価は下記のように取得価額に基づき計算します。
・取得価額ー残存分の評価額=譲渡原価
前年から繰越があったり、取引が多かったり、多銘柄におよぶときは複雑な計算になります。
・譲渡の必要経費
・有価証券譲渡に固有なもの・・・証券会社への売買手数料
・一般的なもの・・・仲介手数料、交通費、通信費、相談料など
・支払利息・・・その年に支払うべき利息
・株式等以外の有価証券の譲渡による所得
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●税率の特例
平成25年12月31日までに譲渡した上場株式等に対する所得税の税率は7%です。
ただし、法人および非居住者には住民税の3%特別徴収は適用されない。
●所得計算の特例
・エンジェル税制(特定中小会社が発行した株式に関する課税の特例)における所得計算の特例
エンジェル株式には、払い込みにより取得した年の株式等の譲渡所得からその株式の取得価額を控除できる特典や、株式が無価値となる投資損失が生じた場合、譲渡損失とみなし3年間繰越譲渡できる特典があります。また、エンジェル株式を払い込みにより取得した年は、払い込み額1000万を限度として、寄付金控除が適用できる特例があります。この特例を受けた金額は、そのエンジェル株式の取得価額から控除されます。
・特定管理株式価値損失のみなし譲渡損失の特例
上場廃止により特定管理口座で保管された株式が100%減資されると、株式の地位を喪失したとして「価値喪失株式に係る証明書」を受け取ります。そのときは、その株式を対価ゼロで譲渡したものとして、他の株式の譲渡益との損益通算が可能ですがみなし譲渡損失の繰越はできません。
・譲渡損失の繰越控除の特例
上場株式等の譲渡による損失は、以後3年間の上場株式等の譲渡所得等からの繰越譲渡の制度が適用になります。平成21年からは、申告分離課税を選択した配当控除からも繰り越し控除できます。
ただし、エンジェル株式譲渡損や価値喪失株式のみなし譲渡損などは配当との通算対象になりません。
●証券市場活性化のための特例
・源泉徴収選択特定口座の申告不用の特例
これは、証券会社に「特定口座開設届出書」と「特定口座源泉徴収選択届出書」を提出して解説した口座内の上場株式等について、証券会社が譲渡等のごとに所得計算・税額計算をして源泉徴収または源泉還付し、その年末残高を翌年1月10日までに一括納付することで課税関係を終了できる制度です。
・株式譲渡損失と配当所得の損益通算特例
上場株式等の譲渡損失があるときは、損失の金額を配当所得の金額(申告分離課税選択時)から控除できます。さらに、源泉徴収口座内に配当収入を受け入れて損益通算後に源泉徴収計算できます。 |